【キャリア】ICTエンジニアが働く業界
- 2021.09.21
- キャリア
一昔前であれば、ICTエンジニアと言えば、Sierやソフトベンダーなどで働くのが一般的でしたが、ICTの開発環境も発達し、需要も増えてきていることから、ICTエンジニアの活躍のフィールドも大きく広がってきています。
理想的なキャリアを描くためには、一つの業界にとどまらず、業界を跨いだ経験を積んでいくことが重要です。
また、転職の際に業界をずらすことで、自身のニーズが高まり大きくキャリアアップすることも可能です。
それぞれの業界の特徴を踏まえ、計画的なキャリアを描くことが重要です。
業界による年収の違い
まずは理解しておきたいのが、業界ごとの年収の水準です。
詳しくは、転職サイトが掲載しているような企業年収ランキングを見てもらえればと思いますが、著者の過去の転職経験から、いくつかサンプルをあげたいと思います。
業種 | 係長級 | 課長級 | 部長級 |
---|---|---|---|
大手Sier | 600万円〜 | 800万円〜 | 1000万円〜 |
Webサービス企業 | ー | 600万円〜 | 800万円〜 |
大手事業会社 | 600万円〜 | 1000万円〜 | 1200万円〜 |
外資系コンサル | 800万円〜 | 1200万円〜 | 1400万円〜 |
こちらは、あくまで業界トップクラスの企業の事例となりますので、もちろん同じ業種の中でも、多少の前後はありますし、年齢層の違いもはありますので、ご承知おきください。
キャリアを描く上で、年収を重要視する場合は、最終的に目標とする年収を得られる、会社、ポジションを目指していくことが重要です。
基本的には、20代のうちにエンジニアとして必要な経験を身に付けつつ、30代から40代で目標となる年収を実現できる業界の転職を目指すのが良いでしょう。
業界ごとの特徴
次に各業界ごとの特徴について説明したいと思います。
特に若い方の場合は、エンジニアとしてのキャリアを描く上でベースとなるような経験、スキルを身に付けていくことが重要ですので、そういった観点でも見ていただければと思います。若いうちに身につけたいスキルや経験については”【キャリア】エンジニアが20代で身につけるべきこと”に詳しく説明していますので、よければ一読ください。
Webサービス企業
Webサービス企業について説明したいと思います。具体的な企業でいうと、有名なところでヤフー、楽天、リクルートなどがあげられます。私としては、特に新卒を含む若手の方が経験を積む環境として、Webサービス企業をおすすめします。
まずは、Webサービス企業に勤めるメリットをあげたいと思います。
・直接ユーザーにサービスを提供しているの、大きなやりがいを感じることができる。
・直接サービス開発に関わることで、圧倒的な当事者意識を持つことができる。
まずは、設計、実装、運用経験を積むことができる点ですが、本番稼働中のサービスであれば、定期的にBugFixや機能追加、リニューアルと、常に設計開発の経験を積むことができます。また、24365運用が基本となるため、シビアな運用経験を積むことが可能です。
DXの流れの中、多くの非IT企業が自社のWebサービスを開発しようとしていますが、Webサービスの経験のない彼らにとって、このような実践的な開発運用経験は、喉から手が出るほど欲しいものとなります。
続いて、やりがいに関して、これは説明不要かと思いますが、例えばヤフーや楽天などのシェア日本一のサービスであれば、家族や友人がユーザーである可能性は高いですし、身近にユーザーがいることで非常に大きなやりがいを感じられます。
最後に当事者意識ですが、自分たちでWebサービスの開発、運用を行なっているため、問題が発生すれば自身で解決が必要ですし、KPIとしてPVなどの数値を持たされている場合は、ユーザー数を増やすために自分たちで施策を考え実施していく必要があります。こういった経験の中で、圧倒的な責任感が自然と身についてきます。
以上、Webサービス企業で経験を積んだエンジニアは、どのような企業からも必要とされ、転職の際にも多くの機会を得ることができます。
私の事例ですが、20代でWebサービス系のメガベンチャーに転職し、30代で日本トップのメーカー系企業に転職しました。転職活動の際には他の企業からも内定を得ることができております。
また、メガベンチャー時代に多くの新卒も見てきましたが、特に優秀な社員は3〜4年くらい経験を積んで、条件の良い会社に転職したり、自身で企業したりしておりました。
Webサービス企業で働く上で、何点か注意が必要な点があります。
・スピードが優先される文化の会社が多く、業務が雑になりやすい。
・比較的若いメンバーが多いため、ある程度の年齢で出世できていないと居場所がなくなる。
文化については、服装や勤務ルール等含めてになりますが、自由に働く文化が根付いてしまっているため、慣れすぎてしまうと固めの会社に転職した際に馴染めなくなってしまいます。スピード優先の文化についても、慣れすぎてしまうと、品質やプロセスを重視する会社に転職した際に細かいミスを連発しボロが出てしまいます。いずれも、自身が自由でルールの少ない会社で働いていることをしっかり自覚し、自身を戒めながら働くことが重要と言えます。
年齢については、比較的若いメンバーが多く、会社としても若いメンバーにチャンスを与える傾向にあります。ある程度の年齢になってくると、部長クラスに出世できていないと、若いメンバーに囲まれて仕事をすることになるため、段々と居づらくなってきてしまいます。
著者の場合、20代のうちに固いSierと自由なメガベンチャーの両方を経験できたことが幸運でした。自由な会社でスピード感持って働くことも、固い会社でしっかりとルールを守って働くことも両方に対応可能です。3社目のメーカーに転職した際には、両方のカルチャーを経験してることを評価したと入社後に上司に伝えられました。固いメーカーで必要な部分ではしっかりルールを守りつつも、開発においてはベンチャーのスピード感を持ち込んで欲しいとの期待からとのことでした。
コンサル企業
コンサル企業についての説明します。具体的な企業でいうと、日系企業で野村総研、アビームコンサルティング、外資でアクセンチュア、PwCなどがあげられます。
最近では、高学歴の新卒社会人が外資系コンサルを選ぶケースが増えてきているという話も聞きます。若いうちに経験を積む場合でも、最終的なキャリアとして高年収を目指す上でもおすすめとなります。
まずは外資系コンサルを選ぶメリットを説明したいと思います。
・若いうちにロジカルな思考や提案力など基礎的な能力を身につけることができる。
一点目にあげたのが、給与水準ですが、例にも挙げたように他業種に比べてかなり高い給与水準となっており、30代の早い段階で1000万円を狙うこともできます。単純に高年収を狙うには、良い選択となります。
二点目についてですが、一般的に外資系コンサル会社の社員といえば、高単価でかなりのスペックを要求されます。さらに周りに優秀なメンバーも多いことから、若いうちから厳しい環境で、クライアントを相手にした提案力やロジカルな思考が鍛えられます。
経験については、基本的にクライアントからの委託案件にアサインされる形になりますので、アサイン次第では複数のクライアントの案件に携わることができ、技術的にも事業ドメイン知識的にも多様な経験を積める可能性があります。
著者も過去にBig4と呼ばれるコンサル会社の方と仕事をする機会が何度かありましたが、いずれも一目で分かるような優秀な方ばかりでした。
一方でコンサル会社で働く上でのデメリットも説明します。
・激務かつ競争も厳しい環境のため、心身ともに辛い。
・クライアントからの委託業務のため主体性が身に付かない。
・実装経験を積むチャンスが少ない。
高収入ということもあり、一般的に入社の難易度はかなり高くなります。若手のポテンシャル採用ともなると、特に地頭の良さといった高性能な基本スペックを求められます。そもそも入りたくても入れないというのが、一般的なケースとして多くなります。
環境について、高収入ということもあり、求められるスペックは非常に高く、スペックの高い同僚に囲まれているため、出世するためにはしっかりと成果を出しアピールしていく必要があります。日本ならではの年功序列を想像していると真逆の環境のため、ある程度の覚悟が必要とされます。
委託業務についてはSierにも共通しますが、お客様からの委託を受けて業務をする形になるために、どうしても自社の事業に携わっている人に比べると事業に対する主体性が身に付きづらくなります。極端な話、お客様の収益に関わらず、案件を拡大して人員を増やせば自社の成果になってしまいます。
実装経験についてですが、コンサル会社の要員になると単価が高くなるため、どうしても実装は単価の低いパートナーに委託となってしまうことが多くなります。若いうちは、できるだけ実装経験を積めるような案件にアサインされるよう、上司へも働きかけていくことが重要です。
外資系コンサルや、Sierにも共通しますが、こういった企業で働く上でも注意が必要な点があります。
基本的に自身で事業をやっているわけではなく、クライアントの依頼をこなす業務が中心とあるため、当事者意識がなくなってしまうことがあります。自社の事業でなくても、当事者意識を持って働くことが重要と言えます。
過去にコンサル出身の方々と面談する機会もありましたが、いずれも一目見てわかるような優秀な人間ばかりでした。20代で外資系コンサルに入る実力があり、若いうちに厳しい環境で実力を磨きたいという覚悟のある方には、高年収かつ成長が望める非常に良い環境であると言えます。
Sier
一昔前であれば、エンジニアと言われて真っ先に選択肢に上がっていたのがSierです。
今でもエンジニアのキャリアとしては、一般的な選択肢となります。
若手へのおすすめ度でいうと、先にあげたWebサービス企業やコンサル企業の方が上となりますが、裾野の広さや案件次第では多くの経験が積めるといった点で、おすすめとなります。
こちらもまずはメリットを説明します。
・会社数も多く、人員不足の背景もあり、入社難度が低い。
開発経験については、基本的にはコンサルと同様ですが、さらにSierの場合はコンサルに比べて実装経験を積むチャンスは多くなる傾向になります。
入社難易度についてですが、会社数が非常に多く、全体的にエンジニアは人材不足という背景もあり、入社難易度は比較的に低めになります。ある程度の実装が出来そうなポテンシャルがあれば採用してしまうという会社もあり、極端な例だと実装や開発経験のない若手を採用し、社内で数日教育してクライアントに送り出してしまうという会社もありました(もちろんブラック)。
一方で、Sierで働くデメリットについても説明します。
・多重下請けの下位企業になるとかなりの激務で薄給。
これらのデメリットは、いずれもSier業界の悪しき風習である、多重下請け構造によるものです。
クライアントからの直受けできるレベルのSierであれば、コンサルに近い水準の給与と経験を積むことができますが、そういった会社はごく一部で、多くのSierは二次受け以降の企業になります。
そうなりますと、直接クライアントと話す機会も減り、上位のSEから指示を受けて、言われるままに設計、実装するだけとなり、主体性はいっさい発揮されません。そして、中抜き構造から給与は少なく、業務の皺寄せも受け多忙となってしまいます。
以上、Sierで働く際には、出来るだけ案件を直受けするような大手Sierに入ることをお勧めしますが、それが叶わなかった場合は、設計・実装の経験を積む場と割り切って、働くのが良いでしょう。その場合も、自身の権限の範囲でも構いませんので、積極的に提案を行うなど、可能な限り主体性をはっきして働くことが重要です。
日系の非IT事業会社
最後が、非IT系の事業会社となります。こちらは非常に多岐に渡りますが、分かりやすいところで、最近DXに力を入れている、トヨタ、7&iホールディングス、ファーストリテイリングなどを想像いただければと思います。
ICTエンジニアとして若いうちに経験を積む場としてはお勧めしませせんが、30代、40代のキャリアとして高年収かつ腰を据えて事業立ち上げを経験する場としておすすめします。
まずは、非ITの事業会社で働くメリットです。
・新規部門の立ち上げに参加するチャンスが多くある。
・新規事業の立ち上げに関わるチャンスが多くある。
・ICTエンジニアが少なく、活躍するチャンスが多い。
・長く働きやすい。
まずは年収ですが、外資系の大企業やコンサルには劣るものの、大企業であれば課長レベルで年収1000万円を狙える水準にあり、かなりの高い水準となります。
新規部門の立ち上げですが、近年DXの加速により、非ITの事業会社で内製化のためのICT部門を立ち上げるケースが多くなっています。現在であれば、こういったICT部門の立ち上げに加わるチャンスとなります。
立ち上げに加わると、一から組織を拡大する経験を得られたり、先行者特権として組織が拡大したときに役職につくチャンスも大きくなります。
著者も前職では大手のメーカー企業でのICT部門立ち上げに加わり、当時4名だった組織が拡大していき、4年ほどでManagerのポジションにつくことができました。
新規事業についてですが、非ICTの事業会社がICTエンジニアを採用する理由の多くはDXの推進となり、顧客向けの新規ICTサービスの開発など、多くの新規事業の立ち上げに関わることができます。
しかも、外注先としてではなく、事業主側の立場として関わることができるので、事業の最上流から関わることができ、エンジアだけではなく、ビジネス開発としてのキャリアも広げていくことができます。
ICT部門の立ち上げフェーズにある会社の場合、当然のことながら社内のICTエンジニアは少なく、いたとしても昔ながら社内システムを担当する情シス部門となり、外部で経験を積んだICTエンジニアは非常に重宝されます。こういった環境では責任も伴いますが、自身が主体的に成果を上げるチャンスを大きく得られます。
終始雇用は崩れつつあるものの、終身雇用はまだまだ色濃く残っているケースが多く、プロパーの社員であれば定年まで働く方も多くいます。キャリアの後半、長く腰を据えて働くには非常に良い環境であるといえます。
引き続き、デメリットについても説明します。
・若手が実装を学ぶのが難しい。
・社内政治が多く意思決定のスピード感が遅い。
まずは文化の面ですが、基本的に終身雇用やってきた会社が多く、社員もその会社のみの経験しかない方が多いため、会社独自の文化やルールが出来上がってしまっています。入社当初には慣れるに時間がかかりますし、自由な会社から転職の場合は、フラストレーションが溜まることが多くなります。
従来のIT部門では、基本的に外注を使うことが多いため、実装の経験を積むチャンスが少なくなります。また新しいICT部門を立ち上げる場合にも、周りは中途の歴戦のエンジニアばかりのパターンが多く、ある程度組織が成熟した段階でないと、若手を配属して育成するというのは難しくなります。
社内政治についてはよく聞く話だと思いますが、私のいた日系の大手メーカー企業の場合は、ビックリするくらい社内政治が横行しておりました。またそれにより、マネジメントの決断力が弱く、意思決定のスピードが非常に遅くなっていました。
これについては、新規のICT部門の場合は組織を切り離してCTO直下にするなど、スピード感を上げるための改善をしているパターンも多くありますが、そういった場合でも最終的に新規に事業を起こす場合には他の部門との関わりが必須となるため、そういった社内政治の壁を突破していくことが求められます。
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